第3回:環境フロンティア部門地域交流賞

株式会社 東芝 研究開発センター

株式会社 東芝 研究開発センター
有信 睦弘 様

事業所名 株式会社 東芝
  研究開発センター
代表者名 有信 睦弘(ありのぶ むつひろ)
事業内容 研究開発(情報通信、半導体、材料・デバイス、機械・システム、環境など)
事業所
所在地
神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地
連絡先
TEL
管理部 総務担当・(044)549−2056
設立年 1961年
従業員数 1,101名(2005年3月末現在)
資本金 2,749億円(株式会社 東芝として)
ホームページ http://www.toshiba.co.jp/
rdc/index_j.htm
E-mail environment@rdc.toshiba.co.jp

受賞者メッセージ

次世代に向けて持続可能な社会を実現するためには、いわゆる20世紀型の大量生産・大量消費・大量廃棄型の活動は通用せず、「よいものを大事に使う『スロー』なライフスタイル」といった価値観の変革が重要です。
 そこで東芝研究開発センターでは、価値観の形成に柔軟な考え方と素地を持つ「子供たち」に対して、学校教育を通して働きかけることは企業として必然であると考え、2000年度より訪問授業などの教育活動をはじめました。環境先進国では20年以上前から多くの学校のカリキュラムに環境教育が組み込まれているといわれますが、近年の環境問題の深刻さを考慮すると、学校だけではなく企業自身が教育に参画することは急務であると思われます。
 この度、私どもの地域交流への取組が、このような名誉ある評価をいただくことができたことは無上の喜びです。草の根的で冗長とも思われる活動ではありますが、子どもたちの瞳は私どもの心を映し出す鏡です。こちらの情熱は彼らの瞳の輝きとなって返ってきます。その瞳をさらに輝かせることができるよう、子どもたちと共に企業の社会的責任のあり方について学び、環境経営の一層の充実をはかってまいります。
 

受賞理由

株式会社東芝研究開発センター
     (環境コミュニケーション活動を通した学校教育への寄与:神奈川県)

サイトレポートとして最も重要視すべき地域住民に対してのわかりやすさに重点を置いて、「こども環境報告書」を作成し、それを教材に、小・中学校の授業、大学の講義などを実施している。
 また、訪問授業を実施した中学校の有志と共同でサイトレポートを企画・編集したほか、中学校では学校の環境報告書が作成されるようになるなど企業と地域や学校との双方向のコミュニケーションが新たな取組につながっている。

環境経営の取り組み

ライフスタイルの変革など新しい価値観を創るためには、企業として学校教育へ寄与していくことが、とても有意義であると考えられます。ここでは、東芝研究開発センターがこれまでに行なってきた教育への取り組みについてご紹介します。

「こども環境報告書」の編纂と訪問授業

当センターでは、2000年9月に第1回目の環境サイトレポートを発行しましたが、内容(表現)が専門的に過ぎて、サイトレポートの読者として最も大切な地域住民への配慮に欠けていたとの反省から、分かりやすさに重点をおいた報告書の必要性が課題となりました。
 そこで、読者の対象を小学校高学年とすることで、わかりやすさの追求をはかることとして、訪問授業の試行や教諭の方々との議論を踏まえて2001年3月「こども環境報告書」(図1)を編纂しました。

 子供環境報告書図
図1.こども環境報告書

こども報告書の発行を機に、これを教材に小・中学校の「総合的な学習の時間」の授業、高等学校のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業の支援、大学での環境工学講義などを行ない、その件数は、2000年度:3件、2001年度:8件、2002年度:6件、2003年度:19件、2004年度:27件で、計63件となりました。
 訪問授業・セミナーでは、いわゆる自然保護や環境問題の基礎的な事柄は最小限にとどめて、企業はどう環境と向き合っているのか?すなわち、企業としてどのように環境に配慮し、そして、どのような課題や悩みを抱えながら努力しているのかについて、環境上の事故・不具合の事例や日常的な苦労話も含めて赤裸に語りかけることとしました。企画の段階では子どもたちの戸惑いや理解不足を懸念して、教諭の方々とも議論を重ねたのですが、授業を行なってみると、これらは全て杞憂であって、むしろ子どもたちを通して教諭や保護者の方々にも意識高揚の輪が広がり、感想やコメントが寄せられるなどの副次的な効果もあることが判りました。

また授業の方法としては、身近な材料を用いた簡単な実験やクイズによって、興味と理解を深められるよう配慮しています。主な事例としては;

  • 「水と空気のためにしていること」として、コーラのpH測定により、下水道法の規制基準値への適合は稀釈ではなく、中和処理が必要であることを示したり (図2)、霧吹きの霧に蚊取り線香の煙が溶け込むようすを示して、化学物質の大気放出を防止するための化学物質除害の仕組みを説明するなど(図3)。

    環境実験
    図2.やさしい環境実験(コーラのpH測定)

    環境実験2
    図3.やさしい環境実験(煙と霧)

  • 「ゴミとリサイクル」として、焼却条件によってはダイオキシン発生の可能性があるとされる塩化ビニルの簡単な見分け方の紹介や、数種類の廃棄物から特別管理産業廃棄物を選択するクイズなど。
  • 「省エネのためにしていること」として、10Wの白熱電球を10個の手回し発電機により点灯させて、100V電灯線による場合との比較を行なうことによる発電エネルギーの体感や、卓上コンロ、圧力鍋、プロペラおよびモーターによる火力発電所の原理紹介を通して、発電と二酸化炭素の関係を説明するなど。
  • 「新しい環境技術」として、当センターにて開発された「消去可能インク」のマーカーペンやコピーをアイロンによる加熱で消色して、紙のリサイクルについて説明するなど。
    いずれも、企業活動や技術に密着した説明を通して、企業や市民生活のあり方を一緒に考えることを目指しています。

中学生との共同編集による「環境サステナビリティ報告書2003」の発行
以上のような活動を踏まえて、2003年度は2002年11月に訪問授業を行なった中学校の有志12名と「環境サステナビリティ報告書2003〜こちら中学校編集局:企業はどう環境と向き合っているのだろう?〜」(図4)を共同企画・編集して、対話型コミュニケーションのプロセスそのものを環境サイトレポートとしてまとめる活動を進めました。

 環境サステナビリティー報告書
図4.環境サステナビリティ報告書2003

この中学生有志とは、「総合的な学習の時間」の授業の一環として2週間毎に、当センターや学校で見学や取材、編集会議を行なって、発行までに9ヶ月間にわたる交流を行なうことができました。この共同編集を通して、彼らは2004年度には自らの学校の環境報告書を作成するほどに成長しました。このように、環境報告書の作成プロセスを通した教育活動は、企業と学校との双方向の連携の姿としてとても意義深い成果をあげることができたと考えています。

対話型コミュニケーションの充実化のためには、以上のように、環境報告書の共同編集は有効な手段の一つであることが分かりましたが、このプロセスには中学生有志の場合のように環境に対する価値観が変わるほど社会的に大きな影響力があるといえます。環境に対する正しい「常識」を身につけた子どもたちが、社会を担うようになったとき、加速度的な変革をもたらしてくれることに夢を抱かずにはいられません。