三重の環境 > 日本環境経営大賞 > 受賞者一覧 > 第5回受賞者一覧 > 学校法人 愛農学園農業高等学校

第5回:環境価値創造部門環境プロジェクト賞

学校法人 愛農学園農業高等学校

奥田氏 写真

教頭 奥田信夫氏

事業所名 愛農学園農業高等学校
代表者名 校長 志賀親則
事業内容 全日制農業高校(全寮制)
事業所
所在地
三重県伊賀市別府690
連絡先
TEL
0595-52-0327
設立年 1963年
従業員数 30人
資本金  
ホームページ http://ainou.or.jp/gakuen/

受賞者メッセージ

学校法人 愛農学園農業高等学校
(農の担い手育成と校内環境整備プロジェクト:三重県)

教頭 奥田 信夫

本校が全寮制の農業高校として創立されたのは1964年、わが国が高度経済成長し始める直前であり、当初は大規模、化学農法による近代化農業を教育の基本としていた。その方針を転じて有機農業を志向し始めたのは1971年で、そのきっかけは奈良県五條市で開業医をされていた故梁瀬義亮氏との出会いにあった。氏は以前から人体に対する農薬の害と無農薬農業の重要性を説かれていた。当時は「有機農業」という言葉すら市民権を得ておらず、四面楚歌のような状況であったが、本校では有機農業こそ人間にも環境にもやさしい農業との信念のもとに農業教育を行ってきた。初めは授業や農業クラブのプロジェクト・意見発表のなかで有機農業を扱うだけであったが、1985年から学校農場全体を有機農業に転換して今日に至っている。 まず堆肥作り、土つくりに重点をおき、野菜を有機栽培に切り替え、次いで果樹、稲作、畜産へと拡大してきた。一般に有機農業は経営的に困難であると言われているが、本校のこれまでの実践で見る限り、有機農業は経済的に成り立つのみでなく、人間にとっても環境にとっても有益な農法といえるであろう。環境を守るには農林業を守る必要がある。農林業を守るにはその担い手を育てる必要がある。しかも環境に負荷を与えない農林業の担い手を育てたいとの願いのもとに、本校は今日まで900人あまりの卒業生を出し、内約4割が農林業に従事している。そのことが評価され2005年には第6回明日への環境賞(朝日新聞社)が授与された。
 又、本校の敷地内で実施している環境改善プロジェクトはまだほとんど知られてはいないし、実証例は少ないが、現在全国各地で頻発している土砂崩れや、河川流域の荒廃などに対して有効な手段となる画期的な内容を含んでいる。その基本である「土壌中空気流システム」は土木技術者、学者、行政上げて取り組む価値があり、その着手が急がれる。

環境経営の取り組み

有機農業教育の取組

本校は農業教育の柱を「土作りを中心とした有機農業教育」においている。農業科目(作物・野菜・畜産・有機農業・環境科学等)で有機農業や林業・環境教育を展開するのみでなく、学校農場全体を有機農場に転換し、農薬や化学肥料を使用せず、環境に負荷をかけない農業生産に取り組んでいる。

稲作:

約2haの水田を15年前から有機栽培で経営している。肥料は学校農場で作っている畜産堆肥を使い、無農薬・無除草剤で栽培している。雑草を抑えるプロジェクトとして、ペーパーマルチ・米ヌカなどの利用の研究をしている。本校水田には50種類以上の水棲動物、昆虫が生息しており、昨年は水田環境鑑定士セミナーの会場になった。米の収量は10aあたり450kg位で、2/3は本校の給食で使用し、1/3は直売店等で販売している。

育て農業後継者 写真

野菜作:

70aの畑で年間約40種類の野菜を有機農法で栽培している。肥料は畜糞・モミガラ・米ヌカなどを発酵させた堆肥を使い、土作りや輪作・混作に力点をおいている。病害虫の出にくい作型を研究し、防虫ネットなども利用することによって安定的に野菜が生産できるようになった。できた野菜の1/4は校内で消費し、3/4は直売店等を通じて地域の消費者に提供している。有機農業に転換後の生産額の推移は表の通りで、有機農業が経営的に成り立つことを示している。

有機農業に転換後の生産額の推移

果樹作:

一般に果樹は有機栽培が困難といわれているが、本校の果樹園(約50a)を有機栽培に転換して10年になる。ブドウやキウイ・ウメ・クリ・カキなどを中心に「安全で美味しい果実の生産」を行っている。プロジェクト研究では「ブドウの無農薬栽培」をテーマに県大会に3度出場し優秀賞を受けている。また梅干し・ジュース・ジャムなど果実の加工にも力を入れている。

畜産:

酪農(搾乳牛20頭、育成牛10頭)、養豚(母豚12頭、肉豚80頭)、養鶏(採卵鶏1800羽)の3部門があり、それぞれ環境にやさしく安全な畜産物生産に心がけている。飼料はGMフリーのとうもろこしを利用している他、米ヌカやおからなども使用している。豚肉を原料にハムやソーセージ、ベーコンに加工販売したり、卵や廃鶏も地域に販売し好評を得ている。畜糞は食堂から出る生ゴミや野菜クズ、米ヌカなどをともに堆肥化し農場で利用するのみでなく地域の有機農家に販売している。

食農・環境教育

本校は全寮制であり、生徒・職員の給食に対して食材の約7割を自給している。「畑から食卓へ」をモットーに、米・野菜・果物・卵・肉・牛乳等はほぼ全量自給し、購入している食材は調味料・油脂・魚介類位である。生徒は調理実習で夕食を作ったり、鶏の解体実習を通して、食物の大切さを実感している。寮生活では省エネやゴミの分別を徹底し3R運動に取組んでいる。また演習林実習で、枝打ちや間伐・搬出などを行い、森林の環境保全機能を体験的に学んでいる。

留学生の受け入れ

現在韓国とインドから留学生3名を受け入れ、国際的な視野で農業や環境を考える人材の育成にも力を入れている。昨年はインドで有機農業を基礎にした農村開発活動をしているインドの大学からと、オーストラリアからの研修生を受け入れ、今年度はミャンマーから2名の研修生受け入れる。

卒業生の動向

卒業生は44年間で900名となり、そのうち約4割強が全国各地で多様なかたちで農業に従事し、地域の担い手として活躍している。有機農業や有機農産物の流通に携わっている卒業生も100名近くを数え、有機農業の推進や地域の環境保全にも1役かっている。また直接農の現場にいなくても授業や農場実習、自分たちが育てた農産物を食材としていただくことで培われた、いのちを大切する精神は卒業生それぞれの現場でいかされている。

7期卒業生 写真    18期卒業生 写真
国内資料と鶏の健康にこだわって有精卵を生産!

校内環境整備活動「愛の森 風の通る森つくり」

教育環境を守るために保護者たちが立ち上げた「愛の森基金」活動は1996年に始められた。7年かけて6000万円の募金目標を達成して学校入り口の森を購入し学校に寄付し、現在第2段として学校の敷地全体の環境整備に取組んでいる。自然を元環境から考えて施工する造園士の指導の下に、キャンパス全体の土壌中の空気や水の流通を含めた大変ユニークな環境整備活動を行っているが、今後さらに充実させて自然環境保全の新しい発信地となることをめざして毎月1回継続的に活動している。

愛農学園環境整備全体図